強引社長といきなり政略結婚!?

朝比奈さんがうちに来た時のことをかいつまんで話すと、ゆかりちゃんが「政略結婚ってことは、汐里さんってお嬢様だったんですか?」とポカンと開いた口に手を当てる。驚くポイントがずれていると思わなくもない。


「どうりで、身のこなしとかが綺麗なわけですね」


それはお世辞だろう。ゆかりちゃんは、私がお客の手を叩いたり、厳しく叱責するところをさんざん見てきたのだ。所作が美しいわけがない。


「でもお嬢様なのに、どうしてここでアルバイトなんてしてるんですか?」

「……それが政略結婚の理由」


なぞかけのように答えると、ゆかりちゃんが顔を険しくさせて考え込む。
出来上がったハンバーグをお客さんへ運んで戻ると、ハッとしたように手の平を拳でポンと叩いた。


「汐里さんのお父様の会社が経営難なんですか?」


ゆかりちゃんは言いにくそうだった。


「正解。家が傾きかけている時に呑気にお嬢様はしていられないでしょ?」

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