強引社長といきなり政略結婚!?

それを払いのけるように明るく返す。
すると彼女は「えらい!」と私に拍手を送ってよこした。


「普通、お嬢様っていったら、どんなに落ちぶれてもお嬢様ぶるじゃないですか。生活レベルはなかなか落とせるものじゃないって聞くし」


あまりにも悪いイメージに苦笑してしまう。


「それなのに、家のことを思って健気にアルバイトなんて……」


驚いたことに目を潤ませて私の手を取る。


「私、汐里さんのことを尊敬します」

「……やだ、そんなに素晴らしいことでもないんだけど」


元々じっとしているタイプでもないし。そこまで直球で言われると、さすがに照れる。


「汐里ちゃんもゆかりちゃんも、口じゃなく手を動かしてねー」


あまりにもおしゃべりに夢中になっていたせいで、厨房から田辺さんに注意されてしまった。

< 59 / 389 >

この作品をシェア

pagetop