言葉は世界を救う!?
私はふと、筒井くんがどんな子だったか思い出した。
「ねぇ、筒井てさ‥高2で同じクラスだよね?」
私は思い切って聞いてみた。
「そうだよ。」
やっぱり‥どこかで見た覚えがあると思った。
筒井は他の男子とは違って、大人しい。教室にいてもいつも本をよんでる。
まぁ、ネクタイの色で判断して思い出したようなもんだけど。ちなみにうちの高校は学年ごとに男子のネクタイの色は違う。
私達の学年の色は青だ。
「筒井は去年の秋に転入してきたよね?確か?」
「よく覚えてるね。そう俺は去年この学校に引っ越してきた転入生だよ。南さん。」
筒井は笑顔をたやさずに言う。
私はこのタイプが嫌いではない。
「‥で今日は、こんなところで何してたの?さっき、客とか言ってなかった?」
「えっ?客じゃないの?」
筒井が聞き返してくる。
「だから何の客?」
私は少しイラつきながら聞いた。
すると筒井は‥笑いながら言った。
「てっきり、僕は南さんが初めて来てくれたお客さんかと思った。‥僕はさ、悩み相談部ていう部活に所属してるんだ。‥と言っても俺、一人の部で俺が部長。しかも、顧問も名前だけていうやつ。」
「え?何それ?うちにそんな部あったの?」
「去年、転入してきた時に作ったんだ。まぁ、今のところ相談者はなしなんだけどね。」
筒井は椅子に座りながら言った。
「どんなことするの?」
「‥単純に、人の悩みを聞く部活だよ。聞くことで相談者の心を軽くするのが狙い。本当なんでもいいんだ。その人の心が軽くなれば。」
私はポカンとしていた。あまりにもすごい部活だから。
「南さん、うちの部に入る気ない?部員募集中。」
「入らないかから。」
私は即答した。確かに部活に入ってないけど‥なんか、この部は怪しい!
「即答だね。まぁいいや。‥で南律花(みなみ りっか)さん。悩みはなんですか?先生を怒らせたことですか?」
「‥て、なんで私の名前知ってんのよ!私、名前言ったけ?」
「俺は記憶力がよくてね。全校生徒の名前と顔が頭に入ってるんだよ。」
「なんか、すっごく怖いんだけど!!悪用なんてしてないよね!?」
私は恐ろしさのあまり鳥肌がたつ。
「心配ご無用。これは学校内でしか使ってないから。」
それを聞いて少し安心した。
「それで今日はどうして先生は怒ってたの?律は悪いことしてる子には見えないけどね。」
「いきなり、女子の名前を言うあんたはすごいね。」
私は呆れてしまう。
「距離が近い方が話しやすいかなと思って。よかったら、話を聞くよ?これは部活だし、お金はとらないから安心して。」
物腰やわらかく言う筒井。
なんか‥話したくなってくる‥。
「部活でお金なんか取られてたらたまったもんじゃないわよ。」
そう言いながら私は筒井の向いの椅子に座った。
「べ‥別に好きで先生を怒らせたわけじゃないから。たまたま、友達に黒板消しを教室にしかけようと思って待ってたんだけど
、それより先に先生が入ってきて黒板消しにあたったの。」
「あっ‥それで先生の頭、白かったんだ。いつもより、光が強いと思った。」
ブッ!
私は思わず吹いてしまう。
「アハハハ!!でしょう?光強いよね?まさか、筒井からそんな言葉を聞けるとは思わなかったよ。‥まぁ、悪いことをしたのは確かだし職員室に行くよ。反省文だけですめばいいけどね‥。」
考えただけでも気が重い‥。
「大丈夫だよ。律はたまたま、ふざけてただけだろうから、ちゃんと誠心誠意を込めて謝れば許してくれるよ。律は普段からしっかり授業受けてるしね。」
「そうかな‥?」
少し不安になる。
「そうそう。でも、頭のことは触れたら駄目だよ。気にしてる人は気にしてるから。てかってる~!とか言ったら駄目だよ?」
真剣な目で言ってくるから余計に笑えてくる。
「高校生にもなって、そんなこと言わないよ。本当に筒井、面白い。そうだね。ありがとう。今から職員室に言って謝ってくる。」
すごく、心が軽くなった気がする!
「うん。行っておいで。俺は昼休みや放課後はいつもここにいるから、いつでもおいで。」
「気が向いたらねー。そうだ‥じゃあ、暇をしてる筒井にもう1つ相談していい?」
私はドアまで戻りかけたが、また筒井のところに戻る。
「いいよ。どんな相談かな?」
「私の友達のことなんだけど‥。」