オフィスに彼氏が二人います⁉︎
One
「別れよう」
夜景の綺麗な空間に包まれながら、目の前の彼に、突然そう言われた。
「へっ?」
微塵も予想もしていなかった彼の言葉に、私は目を丸くし、口をポカンと開けて、そんな間抜けな返事をすることしかできない。
だってそうでしょう。
デートの回数も、愛の言葉も、キスやエッチだって、彼と付き合い始めてから三ヶ月経つけど、良い方の意味でなんの変化もなかった。
それが、急に、別れ話なんて。
夜景の見える海辺のホテルの高級レストランでのディナーに誘われて、すごく楽しみにしていたのに。
別れ話するなら、こんな場所チョイスしなくたっていいじゃない。
窓の外の夜景がやけに眩しい。
高級ステーキの味も、急にわからなくなった。
「ごめん。実は七香(ななか)のほかに付き合ってる女性がいてさ」
「は⁉︎ 二股してたって言うの⁉︎」
「いや、四股」
完全に、絶句した。
彼の方は、悪びれてる様子もない。
「でさー、本命の彼女が妊娠したから、七香には別れてほしいんだ。俺の写メとか持ってたっけ? 持ってたらそれも全部消してもらいたいんだけどーー七香? 聞いてる?」
聞いてない。
聞こえてこない。
……信っじられない‼︎
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