オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「デッ……!?」

思わず、大きな声で“デート”と言ってしまいそうになり、私は慌てて右手で自分の口もとを抑える。なるほど、“仕事の電話のフリをして”というのは、つまりそういうことね。


「えと、それはつまりどういう案件でしょうか……?」

こんな感じでいいのかな?
受話器の向こうから、時山部長がフフッと笑うのが聞こえてきた。何か間違えただろうか。


【あ。ごめんね、急に笑っちゃって。嵩元さんがかわいかったから】

「か……っ!」

またしても、右手で口もとを塞ぐ。
もう。時山部長はなんでこんなにも私の気持ちを振り回すのが得意なんだ……!


【明日の夕方、迎えに行くから出掛けよう。行き先は俺に任せて。どうかな? 二人きりで】

「二人……?」

思わず、そんなふうに聞き返してしまった。
時山部長はすぐに意味がわかったそうで、【ああ、久我くんはいないよ。俺と嵩元さんの二人で行こう】と言われた。


「で、でもその、抜け駆けはダメって久我くんが……えと……」

こんな内容をどうやって”仕事のフリ”で言えばいいのかわからず、単純に小声でモソモソと話すことしかできない。自分で『抜け駆け』なんて言うのも、この状況に自惚れているみたいだし……相手はオフィスの王子二人だぞ。場違いなのは私の方だぞ。


すると。


【大丈夫。俺が君をこうやってデートに誘うこと、久我くんには事前に話してあるから】
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