オフィスに彼氏が二人います⁉︎
月曜日。

職場には、当然だけど普段通りの空気が流れている。

私と時山部長がデートしたことなんて、誰も知るはずがない。


日中、書類のコピーをとっていると、後ろから営業課の先輩から声を掛けられる。
その内容は。


「嵩元さんってさ、久我と同期だったよな?」

「え、は、はい」

え、え、なに? 急に、そんな、なんでそんなことを……。


もしかして、時山部長とデートしていたのがバレた!⁉︎

それとも、それは関係ないけど久我くんと付き合ってることを知られた……?


どちらにせよ、ヤバいでしょっ‼︎



……と思ったのだけれど。




「なんかアイツの様子がおかしいんだけど、何か知らない?」

どうやら、私は一切関係ない話のようで、心の中で安堵の溜息を吐く。


「ええと。様子がおかしいと言うと、どのようにですか?」

「なんか、ヤケに張り切ってるんだよな」

「張り切ってる?」

「まあ、もともと仕事には意欲的で熱い奴だけどさ。こう、普段の二倍増しというか。
理由を聞いてみたら、『日曜日に楽しみなことができたから』としか教えてくれなくてさ。日曜日に何があるのかが聞きたいのに……って、嵩元さん?」

えっ?と聞き返すと、「顔、赤いよ?」と言われる。
咄嗟に自分の顔に手を手を充てると、確かに熱い。


「熱中症? 部長に言って、冷房の設定温度下げてもらったら?」

「い、いえ。大丈夫です」

熱中症ではないけれど、火照った顔はその熱をなかなか下げそうにない……。


だけど、久我くんかわいい。昨日の電話の切り方もかわいかったけど、久我くんって、恋愛するとこんなふうにわかりやすいんだ。
もともとわかりにくい人ってわけではないけれど、三年間私への気持ちを上手く隠していた人だし、なんだか新鮮。


……日曜日のデート、どんな感じになるのかな。
上機嫌らしい彼につられるかのように、私もつい口もとが緩んでしまった。
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