オフィスに彼氏が二人います⁉︎
Three
「おはようございます」

翌日。挨拶をしながら出勤をすると、営業室の入り口すぐのとこで久我くんとバッタリ鉢合わす。


「あ、おはよ七香」

「お、おはよう久我くん……」


夕べは、食器を洗ってアイスを食べた後、そう遅くない時間にお暇した。


キスをしそうになった瞬間はあったものの、実際にキスはしていないし、触れ合ったりもしていない。


だけど今、ふいに彼の顔を見たら、キスをしそうになったあの瞬間のことを思い出し、思わず言葉に詰まりかけた。



「七香? どうした?」

明らかにいつもと違う様子の私が気になったのか、久我くんが不思議そうに首をかしげる。


「う、ううん? 何もないよ?」

「そうか? ならいいや。
……あのさ、昨日はありがとう。楽しかったよ」

近くに誰もいないことを確認しながら、久我くんは小声でそう言う。


「そ、そんな。ありがとうは私の方だよ。ご飯、すっごくおいしかった」

「ははっ。なら良かった。あんなので良ければまたいつでも作るからな」


そして……。


「はあ、なんかさ。七香が休日に俺の家に来て一緒に過ごすっていうのが、俺にとっては絶対にありえないことだったからさ。昨日は本当、すげぇドキドキしたし、幸せだった」

「え……っ。で、でも久我くん、いつも通りにしか見えなかったよ」

「バカ。いつも通りを演じてたんだよ。緊張して手汗すごかったんだぞ」

そう、だったの……?
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