オフィスに彼氏が二人います⁉︎
木曜日。

十二時を示す腕時計を確認しながら、食堂に向かうためにエレベーターホールに向かう。


すると。


「七香、お疲れ」

後ろから、久我くんに声を掛けられる。彼もこれから休憩らしく、私の隣に立って一緒にエレベーターを待つ。

久我くんとはお昼休憩に入る時間が基本的に同じだから、こうやってエレベーターを二人で待つことも珍しくないのに、なんだかドキドキしてしまうのは何故……?


「……ほんとはさ」

「ん?」

彼の声に振り向くと、真剣な顔で私を見つめていた。そして。


「七香と話したくて、七香がお昼に行く時間に合わせた」


そんなこと言うから、うれしくて更にドキドキしてしまうじゃないか。

……私、昨日からずっと久我くんにドキドキしてる。


恥ずかしくて俯いて、無言になってしまった私を見て誤解したのか、久我くんは突然ちょっと慌てた様子を見せ、


「あーー気持ち悪いとか思うなよ? 合わせたと言っても、ちょっとな、ちょっと! もちろん仕事優先してるよ」

と言った。久我くんが仕事に真面目なのはとっくに知っているし、そんな誤解はしてないんだけどね。


「ただ、ちょっと予定が聞きたくて、二人になれないかなとは確かに思ってたけど」

「予定?」

「今度の日曜日も、できたら会いたくて。行き先とかやりたいこととかは、七香が決めてもいいよ」

そう誘われ、私は「うん」と首を縦に振った。また誘ってもらえてすごくうれしかった。
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