オフィスに彼氏が二人います⁉︎
あはは、時山部長ってばなんて冗談をーーと思ったけど、

「ダメ? 混じる権利はあると思うんだけど」

と言われる。

どうやら、本気らしい。


権利がある、と言われれば、うーん、そうなのかな? 時山部長も彼氏な訳だし……。


私の気持ちが、完全にどちらかに固まっていないのも事実だ。



すると時山部長は、今度は久我くんの方を見て。


「抜け駆け禁止、って約束したよね?」


そう言われた久我くんは、グッと言葉を飲み込むようにした後、眉間に皺を寄せながら、


「……わかりました」

と答えた。
わ、わかっちゃうの?



「じゃあ、詳細はまた後日」

時山部長は、そう言ってその場から去っていく。エレベーターを待っていた訳じゃなかったみたいだ。私と久我くんが仲良くしている様子を見て、会話に入ってきたのか。


なんだか心が少しモヤモヤする。
時山部長も一緒に休日を過ごすことになったから、ではない。

久我くんが、『わかりました』って言うから……。

男と男の約束を守るのはいいけどさ。久我くんにとっては、私との約束なんてそんな程度のものなの?


……何で私、こんなに久我くんのことばっかり気にして……。



「エレベーター来たな」

チン、という音と共に、エレベーターの扉が開く。
中から何人か外に出てきて、空になった空間に久我くんが入る。
開ボタンを押して、私が乗り込むのを待ってくれるけど。


「……私、階段で行く」

私の言葉に、久我くんは「は?」と短く答えて、目を丸くさせる。

そんな彼に構うことなく、私は背を向け、階段の方は駆けた。


さっき感じたモヤモヤの中に、今はイライラも混じってる気がする。

でも何でこんな気持ちになるのかはわからなかった。
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