オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「久我くん、どうかした?」

女の子の家に来てソワソワするならともかく、ここは時山部長の家だ。いくら上司の家とは言え、久我くんが落ち着かない様子なのはおかしいと思った。
すると彼は。


「いや、だって心配になるだろ」

「何が?」

「時山部長、上司とは言え、年齢で言うとそこまで変わらないんだぜ。なのにこんなでかいところに住んでて……。ただの上司なら『すげぇ』と思って終わりかもしれないけど、恋敵なんだぜ。こんな家見せられて落ち着いていられるかよ」

そう言うと久我くんは、恨めしそうに深い溜め息を吐いた。


「ふふっ」

「ちょ、何笑ってる」

「だって、なんか」


ーーかわいくて。

そう言うと怒るだろうなと思ったから言わなかったけど、自然と笑みがこぼれた。


恋人の家、ということで私も多少なりとも緊張していたけど……久我くんのお陰で、その緊張もほぐれた感じがする。



すると。


「お待たせ」

時山部長が、マグカップが三つ乗ったトレーを持ってきてくれた。

彼は、そのトレーをソファ前のテーブルの上に置くと、私の隣に腰掛けた。


色と香りからして、マグカップの中に入っているのは紅茶のようだ。湯気が立っていて、温かそう。


「さあ、どうぞ」

時山部長がマグカップを二つ手に取り、一つを私に渡してくれる。


「久我くんも座りなよ」

時山部長に声を掛けられ、久我くんも私たちの正面の一人掛け用のソファに腰をおろした。そして、最後のマグカップを手に取った。
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