オフィスに彼氏が二人います⁉︎
「……え?」
私は目を見開いて、口を半開きにした状態で時山部長を見つめる。
でも、時山部長は微笑んだまま、何も言わない。
チラ、と久我くんを見れば、彼も驚いた表情で時山部長を見ていた。
でもすぐに、久我くんと私の視線が合う。
その瞬間、彼はハッとしたように時山部長に視線を向けて、
「どういうことですか?」
と聞いてくれる。戸惑う私の気持ちを代弁してくれたように思えた。
すると、時山部長は。
「恋人を自分の家に連れてきたいって思うことは自然だろう?」
マグカップをテーブルの上に置いて、静かにそう言う。
「でも、嵩元さんは真面目な子だから、久我くんという〝もう一人の恋人〟がいる以上、まともに誘っても来てはくれないと思ってね」
彼の言葉を聞いて、何て答えたらいいかわからず、私もとりあえずマグカップをテーブルに置く。
彼の言うことはわからなくはなかったけど、何も具合の悪いフリをして嘘を吐かなくても……本当に心配したのに。
「ああ、ごめんね」
私の心の声を読み取ったかのように、時山部長がそう謝る。
そして、大きな右手で私の頭を撫でる。
「嫌な思いさせたよね。申し訳ない。
でも、君のことが本当に好きなんだ。家に連れてきたかった」
……真っすぐな愛の言葉。
それを聞いたら、彼を責める気にはなれない。
……だけど……。
なんでだろう。
前までは、彼からの愛の言葉や、私に触れる体温の一つひとつにドキドキさせられていたのに……
今は、なぜか、
ーー久我くんの前でやめて。
そんな風に思ってしまった……。