オフィスに彼氏が二人います⁉︎

「あ、あの。わかったので、その」

私はつい、時山部長の手をそっとどかしてしまった。

拒絶しているように思われたかな。でも……触れられているところを久我くんに見られたくなかった。


すると。



「嵩元さん。俺たち、恋人同士だよね?」

時山部長からのその質問に、思わずギクリとしてしまった瞬間。



「ん……っ⁉︎」


時山部長が強引に、私の唇にキスをした。



……やめてっ‼︎


キスをされた瞬間に思ったのがそれだった。
恋人同士、なのに。憧れの人のはずなのに。


でも、嫌だった。


何より、久我くんが見ている。


抵抗するけど、頭をしっかりと抑えられていて身動きが取れない。



「……っ、何してるんですか‼︎」

私たちの間に久我くんが割って入り、何とか唇は離れた。


突然のことに、頭がついていかない。

キスをされた驚き。
そのキスへの嫌悪感。
久我くんに見られた動揺。

色んな感情が押し寄せてきて、パンクしそうだ。


だけど、時山部長は表情一つ変えることなく、静かに久我くんに言い返す。


「彼氏が彼女にキスをして何が悪い?」

「な、七香の気持ちが固まるまで、デートでキスはしないって約束したでしょう!」

「それは、〝抜け駆けしてキスをするのは禁止〟って意味だっただろう? 今は、もう一人の恋人である君も居合わせている。何も問題ない」

そうして、時山部長は再び私の唇を無理やりに奪う。
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