トンボ
「え・・・?」
田所くんは不思議そうな顔をして私を見つめる。
そりゃそうだ。
田所くんは私のことを知らない。
いきなり自分の顔見て悲鳴上げて固まられたら誰でも不審に思う。
私が何も言えずに固まっていた。
先に口を開いたのは田所くんだった。
「あ・・・もしかして林さんの?」
「は、はい。」
「名前は?」
「青田奈々といいます。
ごめんなさい、なんかこんなことになっちゃって・・・」
「ううん、むしろ嬉しい。
じゃあ・・・アドレス交換する?」
「え!!!あの!!
私、ほんとにそんなつもりじゃなくて・・・
ただ見てるだけでいいって思ってて!」
恥ずかしくて顔が見れない。
いつの間にかマツは消えてるし。
田所くんは何も言ってくれなくて、この場を収めるにはとりあえずアドレスを交換するしかないように思えた。
「それじゃあ・・・」
ケータイを取り出してアドレスを交換すると、逃げるように帰った。