トンボ


―4月。



今日は記念すべき初登校の日。


「だ~!緊張する!!
予備校ってどんなとこだろね?
ガリ勉みたいな人ばっかりだったら嫌だ!」

「だよね。友達いっぱいできるといいな~」



田舎から出てきた私たちは予備校ってものがどんなものか知らなかった。

そりゃあちっさいちっさい予備校ならぽつぽつあったけど、いわゆる大手と呼ばれる予備校は一つもなかった。

だから志望大学に近い予備校で浪人することにしたのだ。



「マツ、席指定だって!」

「まぢ?あ~ナナとは遠いな!
まぁお互い頑張ろうぜ!じゃ!」


社交的なマツは何の不安もないのかさっさと自分の席に行ってしまった。

私は不安でいっぱいなのに。


仕方ない。席につこう。









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