まわりみち

授業

「ここはさっきの公式を使います」

教室に先生の声が響く。

隣に座っている琴乃は、小さな寝息をたてている。

よほど疲れたんだろう。

その時、後ろに座っていた香が僕の肩を叩いた。

「何か用?」

「このメモ、琴乃に渡して」

「えっ、どうして?」

「だって、琴乃は寝てるから。遙祐も読んでいいからね」

「わかった」

香が僕に渡したメモは何かの紙の切れ端だった。

僕は内容が気になって、メモを開いた。

『もうすぐさつきの3回忌。ちゃんとくるよね?来れないなら早く連絡してね』

僕はメモの内容に驚いた。

後ろを振り向こうとしたけれど、できなかった。

僕は状況を察して琴乃を起こした。

「何?」

「香からメモがまわってきて…」

「ありがとう」

琴乃は僕の手からメモを受け取って開いた。

メモを見た琴乃は、僕と同じように驚きを隠せないようだった。

それから僕らは心そこにあらずだった。
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