先生、もっと抱きしめて
そう思って立ち上がろうとしたら、マツタクは静かに話しかけてきた。

「……もう、泣いてない?」


失恋、の話?

まだ、話してていいの?



「うん。先生のおかげなの。先生は、泣いてない?」

マツタクは、ふっと笑うと、ちょっと迷ったように椅子の背もたれを引き寄せて、そこへ腰かけた。

「泣くヒマないよ。忙しいし、生徒の面倒もみないとだし、補習はあるし……」


同じ目線で話してくれているような口ぶり。
「担任」「先生」「数学教師」の顔とは少し違う、柔らかい感じ。


「彼女さん、どんなひと?」

「んー?それは秘密」

「ええっ。ズルイ」

「じゃあ三好の彼氏はどんな奴?」

聞き返されてしまった。
マツタクは優しい笑顔で私を見ている。
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