先生、もっと抱きしめて
涙がやみ、私と先生は夕暮れの残る、暗くなった旧館の廊下を歩く。
先生が少し先。私はその後ろ。

下足室への階段前で私が立ち止まると、マツタクは私がそこで立ち止まるのがわかっていたかのように振り向いた。

「結構解けてたから、明日で補習終わりな。また、明日の放課後、数学準備室に来て」

「はい」

先生は、少し心配そうに私を見つめる。
私は、先生と離れたくない思いを、口に出せない代わりに瞳に乗せた。


先生、好き。

どうしよう。すごく好き。

もっと、一緒にいたい。

「先生」じゃない先生も、知りたい。


形のいい指先で、私に触れてほしい。

先生の唇が、私に触れてほしい。

かき乱して、近づきたい。


夕暮れの色の、数学準備室で。




「さようなら」


私の方から頭を下げて、くるりと踵を返した。


「また明日」


先生の声が、私の髪を撫でているような気がした。
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