先生、もっと抱きしめて
先生は用紙を教卓に起き、慌てた様子でポケットを探り始めた。

私も、顔を伏せたままポケットに手をやり、ハンカチを出そうとすると、机の上に白のハンカチを出された。

ラルフローレンの清潔そうなハンカチ。
先生っぽくて、私は泣きながらも少し笑ってしまった。

「え。なんでオレ笑われてるんだ?」

「あっ、違うの、……ありがとう……。フラれたぐらいで、って怒らないんだね」

私は、そのハンカチでそっと目を拭った。白いハンカチに涙が染み込むのを見て、机の上できゅっと握る。
先生は、背もたれに重心を寄せ、椅子をギィっと鳴らした。

「まあ……オレも先日、似たようなことがあったから、気持ちはわからないでもないし」

「えっ?マツタクも?」
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