先生、もっと抱きしめて
「しまったなぁ。視界が悪い……」

弱り声の先生に、私はある提案をした。

「先生、夜景見に行かない?せっかくここまで来たし、ついでに!」

「ええ…?ついで?」


こんなこと、もうないかもしれないし。
先生の車に乗ることも、先生の好きだった彼女の話を聞くことも。

……今も、好きなんだろうけど……。

こんな機会、そうそうあるとは思えない。


「じゃあ、行く?誰にも見つかんないようにしないと……」


その言葉を聞いて、マツタクの理性やモラルが垣間見えた気がした。



教師と生徒だから。
誰にも見つからないように――。

< 36 / 55 >

この作品をシェア

pagetop