先生、もっと抱きしめて
先生は「うん」と言ったっきりなんにも言わない。

でも手は解かれない。
ぎゅうとまた強く握ると、同じくらい返してくれた。

それでも先生は、なんにも言わない。



教師と生徒。

スーツと制服。

27歳と18歳。

成人と未成年。


男と女…には、なれないか。



つないでる手が、先生の冷たい指が、二人の体温で熱くなっている。
次第に私の手も汗ばんできてるけど、解く勇気はない。
このまま、つないでいてほしい。


走り出しそうな衝動は、ギリギリのところで保っている。

こんな気持ちは、私だけ。
先生は、なんとも思ってない。

自分にそうやって何度も言い聞かせながら、愛しい人の手のぬくもりを噛みしめる。


……先生が、なんにも言わないのが、怖い。
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