先生、もっと抱きしめて
「私の話はいいよぉ。それより、先生も泣きなよ!フラれたなら」

「だから泣かないって。余計なこと話しちゃったなぁ……」

「まだ好きなんでしょ?」

自分のことを棚に上げて、先生をいじり返した。


「三好はどうなんだよ?」

「私の話はいいよ、今は先生の話っ」

「え~。オレももう、そんなに……」

そんなに?

そんなに、もう好きじゃない?



「ねえ、先生、そんなに、何?」

続きの言葉をせがんで、マツタクの顔を覗き込む。

その途端。
ぐっと腕をつかまれて、息を飲んだ。
見ると、いつもとちがう真剣な先生の顔がすぐ近くにあった。


「手のかかるやつのせいで、失恋どころじゃないよ」

顔が、近づく。
先生の唇がすぐそこにある。



夜景なんてもう見えてない。

先生は、キス……するつもり?
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