先生、もっと抱きしめて
「ぷあっ……」

キスの合間に息継ぎをするように、彼女が口を開けた。
そこで俺は少し正気に戻る。

ふたり、はあはあと肩で息をしながら見つめあった。

……なんだこれ……。
気まずい……?

「先生、やばいって顔してる……」

「そんなことは思ってないっ」

恨めしげに指摘されて、慌てて否定した。

「や、ちょっと思ってるけど、そういう感じじゃなくて……」

「元カノさんが忘れられないのに、キスしちゃってごめんなさい……」

あっ。やべっ。
今にも泣きだしそうな三好に、がさごそとポケットを漁るが、ない。

この子、元カノのことやたら気にしてるけど、それはホントにもういいんだけど。
三好の瞳からこぼれる涙は、なぜだかとても愛しい。

ハンカチが見つからないから、指で涙の粒を拭った。


「俺こそ、キスしてごめん……止まらなくて」
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