狼社長の溺愛から逃げられません!
一緒に泊まるってことは、もしかして……。
ベスト姿の社長が、長い指で乱暴にネクタイを緩め、しゅるりと音をたてて外す。
片手で首元のシャツのボタンを外しながら、首をかしげた。
「どうした。急におとなしくなって」
「い、いえ……」
慌てて首を横に振って、とりつくろうように口を開く。
「あの、社長はいつもここに泊まったりしてるんですか?」
「は?」
「編集の鳥谷部さんが言ってました。ホテルのスタッフさんがいつも黒瀬社長にはお世話になってるからってVIP待遇だったって」
「あぁ」
私がそう言うと、社長が笑って小さく頷いた。
「海外からゲストが来たときに、部屋を用意してもらってるからだろ」
「あ、そっか……。社長はいつもこんな部屋に泊まってるのかと思ってました」
「都内に住んでるのに、わざわざ泊まんねぇよ。今日は特別だ」
「特別……?」
首をかしげると、社長がこちらを見た。
黒い髪の間から見える瞳が優しく弧を描く。
「頑張ったご褒美だ」
そう言われ、胸がきゅんと苦しくなる。