狼社長の溺愛から逃げられません!
 

写真には『カナダの映画祭で元女優の篠原紗英が映画業界で噂のイケメン社長と熱烈キス』なんて煽るような見出しがつけられていた。

背が高く端正な顔の社長とスタイルがよく色っぽい女優さんは、そのままで映画のワンシーンになりそうなほどお似合いだ。

社長がこんなふうに微笑みかけるなんて、よっぽど親しいにちがいない。
恋人、なのかな……。

そう思うと、胸が握りつぶされるように痛んだ。

篠原紗英……。
声には出さずつぶやいて、ハッとした。

そういえば、その名前を最近聞いた気がする。
たしか、古賀さんと話しているときだ。

五年前、シネマボックスの新社長に就任してはじめて手掛けた映画の話。
あのとき恋人との映画デートをスクープされたのが、女優の篠原紗英さんだったはずだ。

五年前のことがきっかけで、ふたりは親しくなったのかな。それからずっと付き合っていたのかな。
私のことはやっぱりただの気まぐれで、好意なんてなかったんだ。

写真の中のふたりはみとれてしまいそうなほどお似合いで、私の付け入るすきなんて少しもなかった。


やっぱり、社長は別世界の人なんだと思うと、胸がきしむように痛んだ。



 

< 182 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop