狼社長の溺愛から逃げられません!
静かなカフェの奥の席にふたりで向かい合って座る。
運ばれてきたカフェラテに口をつける気にもなれず、口をつぐんで白い湯気を眺めていると、ため息をつかれた。
「あんたってか弱そうな顔して、意外と図太いんだね」
「どういう意味ですか」
部長と話していたときとは別人のような態度でつまらなそうに言われ、眉をひそめた。
「ニュース見ただろ。篠原紗英と黒瀬がキスしてるの。自分がただの遊び相手だって思い知って落ち込んで泣きじゃくってるか怒り狂ってるかと思って様子を見に行ったのに、意外と冷静でつまんねぇ」
そう言いながら、ぽいっとメモをテーブルの上に投げられた。
慌てて拾い、手のひらの中にぎゅっと握る。
「それとも自分は最初から都合のいい遊びの女だって、割り切ってたの?」
「そんなこと……」
「悪いこと言わないからやめた方がいいよ黒瀬なんて。金のために女を利用してもなんとも思わないヤツだから」
「どういう意味ですか?」
あきらかに悪意のある言葉にぎゅっと眉をひそめると、小笠原さんは投げやりな口調で言う。