狼社長の溺愛から逃げられません!
「五年前だってそうだ」
「五年前……?」
小笠原さんの言葉に顔をあげると、バカにするような冷ややかな視線でこちらを見る。
「知ってるか? 五年前のこと」
「社長がシネマボックスに移って、はじめて公開した映画のことですか?」
戸惑いながらそう言うと、小笠原さんが小さくうなずく。
「黒瀬は映画の話題作りのために、篠原紗英を利用した。スキャンダルをでっち上げ、週刊誌にネタを流した。映画をヒットさせ金をもうけるために、あいつは自分の恋人を売ったんだ」
「恋人……?」
その言葉に、息をのむ。
恋人って、社長と紗英さんが……?
ネットニュースに載ったふたりのキスをする姿を思い出して、心臓が握りつぶされたように息苦しくなる。
「そのころちょうど紗英が撮影中だった映画の監督と映画を見に行って、そのときの写真を不倫だと週刊誌が大きく取り上げた。確かにその監督には妻子があったし、女優との不倫疑惑が何度かでたことのある男だったけど、紗英がそいつと不倫をするわけがないんだ」
小笠原さんが一度言葉を区切ってこちらを見る。
そして、私が真剣な顔で話を聞いているのを確認すると、ゆっくりと口を開いた。