狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「あいつは黒瀬のことがずっと好きで、ふたりは付き合ってたんだから」

ショックで、体が強張った。
メモを握りしめたままの指先が震える。

カナダでキスをしている写真を見て、もしかしたらとは思っていたけど、実際に聞くとショックだった。

そんなに前からふたりは付き合っていたんだ。
私が付け入る隙きなんて、もともと少しもなかったんだ。

私がうつむいていると、小笠原さんは社長のことが憎くて仕方ないというように声をあらげた。

「紗英はそのスキャンダルが原因で芸能界を追われて、女優を引退した。まだまだこれからいろんな作品に出演できる、可能性のある女優だったのに。黒瀬のせいで全てを失って海外に移住した」
「そんなの、信じられません」

社長が、そんなことをするなんて。
いくら映画のためとはいえ、恋人のスキャンダルをでっちあげて利用するなんて。

「今回だってアメリカでようやく成功した紗英を、あいつはまた利用したに決まってる」
「今回……?」

キスをするふたりの写真を思い出して首をかしげていると、小笠原さんのするどい視線がこちらを見据える。




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