狼社長の溺愛から逃げられません!
「あんただって、利用されてるだけだ」
唇を噛んでいると、冷たくそう言われた。
「自分の思い通りに動くように、都合のいい甘い言葉で騙されてるだけだって気づけよ」
私はうつむいて首を横に振る。
ぎゅっと歯を食いしばりながら思い出すのは、社長のうつむきがちの笑顔。
あの社長が、そんなひどいことをするなんて、信じられない。
「じゃあ、もし俺が『ルイーズ』の評論を雑誌に載せないかわりに、俺と寝ろって言ったらどうする?」
「……え?」
突然そう言われ、驚いて眉をひそめた。
「黒瀬にそう言ってみろよ。きっとあいつは平然とあんたを俺に差し出すよ」
投げつけられるように吐き捨てられた言葉が、胸に刺さる。
あまりにショックで呆然としていると、小笠原さんはテーブルに置かれた伝票を持ち立ち上がった。
「そうだな。来週の火曜まで待ってやる。それまでに連絡してこなかったら、あの批評は雑誌の編集に渡すから」
とても思考がおいつかず、青ざめながら小笠原さんのことを見上げる。そんな私に、彼は顔を歪めて笑った。
「あんたが映画のためにほかの男とも寝る覚悟があるって知ったら、あんたはちょっとは役に立つ使える女だって黒瀬に見直してもらえるかもよ?」
投げつけられた言葉の棘に私はなにも言い返せずに、店を出ていく小笠原さんの姿をただぼんやりと眺めていた。