狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「社長おかえりなさい!」

そのとき誰かの声がして顔を上げると、オフィスに社長が入ってくるところだった。

どうして……。
帰国するのは明日のはずなのに。

そう思いながら遠巻きにその姿を見る。

「早かったですね」
「向こうでの要件は大体片付いたから、あとは契約部に任せて切り上げてきた」

そう言いながら歩いてくる。
十日ぶりに見るその姿に、胸がきゅんと締め付けられると同時に、どうしようもなく息苦しくなる。

会いたかった。
でも、会いたくなかった。

社長がちらりとこちらを見て、目が合った途端思い切りそらしてしまった。
動揺を悟られないように、息を殺してうつむく。

なにか言いたげに口を開きかけた社長に気づかないふりをして、バッグにファイルをしまい席を立った。

「私、倉庫で宣材整理してきます」

保元部長に早口でそう言って、逃げるようにオフィスを出た。


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