狼社長の溺愛から逃げられません!
オフィスとは別フロアにある倉庫。
そこには映画の宣伝のために使われる看板や垂れ幕、いわゆる宣伝材料が詰め込まれている。
劇場に置かれる立体的なスタンディ看板から、あちこちで配られるフライヤーまでつめこまれているそこは、日焼けを防ぐためにいつもブラインドが下ろされていて薄暗くて少し落ち着く。
ここにいれば、社長に会う心配はない。
ふぅっと息を吐き出し、着ていたカーディガンのそでをまくる。
今日は急ぐ仕事はないし、時間までここで整理をしよう。
そう思ってとりかかる。
夢中になってダンボール素材の看板を綺麗にたたみ重ねていると、かたりと背後で音がした。
なんだろうと後ろを振り返って、そこにいた人影に体を強張らせた。
不機嫌そうに壁にもたれ、こちらを睨むその人。
「なに、目が合った途端逃げ出してんだよ」
社長が私を見ながらそう言った。
「……逃げてなんていないです」
ごまかしながらも後ろめたくて顔をそらす。
そんな私に、社長は壁にもたれかかっていた体を起こし、険しい表情のまま近づいてきた。