狼社長の溺愛から逃げられません!
「俺がいない間、またふらふらふらふらしてたんだって?」
「そんなこと……」
「保元部長が言ってたぞ。お前に会いにオフィスに男が訪ねてきてたって」
小笠原さんのことだ。
そう思って口をつぐむ。
すると、社長は長いため息をついた。
「……ほんとお前は、人の気も知らねぇで」
そう言われ、顔をしかめる。
社長の気持ちなんて私が知るわけがない。
だって、社長は本当のことをなにも言ってくれないんだから。
「一日早く帰るために、どんだけ仕事詰め込んだと思ってんだよ。それなのに、俺の顔を見た途端隠れるようにこんなところに閉じこもって」
うつむいているせいで顔にかかった私の髪を、長い指がすくいあげ耳にかける。
それでもじっと自分の足元を見つめていると、長身をかがめ顔をのぞきこんできた。
「……焦らしてるのか?」
黒い瞳にじっと見つめられて、思わず想いが溢れた。