狼社長の溺愛から逃げられません!
……やっぱり、嫌だ。
他の人に触れた唇で、平然と私にキスをするなんて。
嫉妬で、叫びたくなった。
自分がこんなに嫉妬深くて欲張りだなんて知らなかった。
そんな私の気も知らず、社長は私の体を抱き寄せる。
十日間、ずっと社長のことを考えてた。
ずっとこの腕に抱きしめられたかったし、キスをしてもらいたかった。
だけど……。
「や……っ!」
紗英さんの次なんて嫌だ……!
反射的に社長の手を振り払い、顔をそむける。
「……有川?」
私のその行動に、社長は驚いたようにこちらを見ていた。
ふり払った腕が当たり、倉庫の棚においてあった私のバッグが落ちた。
中に入っていたファイルが、バサッと音をたてて床に散らばる。
その中に小笠原さんから渡された批評も入っているのを思い出して、はっと顔色をかえる。
その私の表情を、社長は見逃さなかった。
慌てて手を伸ばした先にある目的の紙を、私よりも早く拾い上げる。
そこに描かれた文章に目を通し、社長は眉をひそめた。