狼社長の溺愛から逃げられません!
 

社長にとっては、自分の会社で配給する何本もの映画の中のたった一本なんだろう。

だけど私は今までひとりでも多くの人に『ルイーズ』を見てもらうために、一生懸命頑張ってきた。


それなのに、たった一言で断ち切られたことがショックだった。

全世界から注目される大作の配給権を獲得したから、『ルイーズ』のことなんてどうでもいいと思ってるのかな。

日本で公開される単館系の映画の一年分の興行収入を全部まとめたとしても、ハリウッドの超大作一本分には遠く及ばない。

お客さんはどの映画にも同じだけの金額を払い劇場に足を運ぶけれど、市場規模は天と地ほどの差がある。


まるで、紗英さんと私みたいだ。
そう思った。


元女優で今はプロデューサーとして成功した美しく才能のある紗英さんと、平凡で無力な私。

社長が男として、経営者として、どちらを大切にするかなんて考えるまでもない。

映画の『ルイーズ』と一緒に自分も社長に見放されてしまったような気がして、歯を食いしばりバッグを掴むとその場から逃げ出した。





 

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