狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「こんにちは、美月ちゃん」
「如月監督……。なにしてるんですか?」

パーカーにデニム。そして背中には大きなリュック。
まるで高校生みたいな格好をしてカメラをかまえる如月監督に目を見開く。

一体いつからいたんだろう。

「八ミリフィルムで街を撮ってた」
「あ、これ八ミリカメラなんですね」

四角いカメラに細長い取っ手のついた独特の形。
写真ではみたことがあるけど、実物ははじめてだ。

シンプルで角ばっていて、なんだかかわいいカメラ。でも私には使い方がさっぱり分からなくて、首を傾げながら如月監督の手元をながめる。

「今撮ってる映画、なんか納得いかないから八ミリの映像を挟み込んだら面白いかなって思って昨日からあちこち撮ってたんだ」
「昨日からずっと、ですか?」

驚いてそう聞くと、うんと当然のようにうなずく。

見れば監督の着ている服がかすかにくたびれてるように見えた。

一晩中外にいたのかな。
きっと寝食も忘れて夢中で撮ってたんだろう。

監督にとっては、映画のために一日中外で撮影をすることなんて、苦でもないんだろうな。


 
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