狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「そう。四人とも映画が好きであの会社に入社して、いっつも酒を飲みながらあーだこーだ映画のことを暑苦しく語ってたんだよ」
「知りませんでした……」

小笠原さんが社長と昔からの知り合いだったなんて。

「俺は仕事しているうちに、配給するよりも制作に興味を持って制作会社に移って助監督をやってたんだよね。小笠原は宣伝のコピーとか考えているうちに面白い文章を書くって評価されるようになってフリーの評論家になって、紗英は映画監督に見初められて映画に出てくれって口説かれて、デビュー作から一気に注目されてあっというまに人気女優になって。今はそれぞれいろんなことしてるけど、一番意外だったのは黒瀬が会社を移ったことかな」

そう言った監督に私は首をかしげた。

「社長ですか?」

社長は四人の中で唯一ずっと配給に関する仕事をしているのに、どうしてだろう。配給会社の社員から監督や女優になるほうがずっと意外に思えるのに。


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