狼社長の溺愛から逃げられません!
「そしたらあいつ『興行記録のランキングに名前を連ねるような大衆に受ける映画だけが、誰かの人生を変える一本になるわけじゃない』って。『小さな映画館でひっそりと上映されていた映画が、その人の生涯忘れられない一本になることもある。その運命みたいなめぐり合わせをひとりでも多くの人に届けたい』って言ったんだ」
その言葉に、胸が熱くなった。
じわりと目尻に涙が浮かんで慌ててうつむくと、如月監督はカメラをこちらにむけたまま笑った。
「むかつくでしょ」
「……はい。むかつくくらいかっこいいです」
「だよね。もっとむかつくのはさ、社長に就任した途端どんどん業績あげていってあっという間に会社を大きくしちゃったことだよね。今では全国で一斉にロードショーをかける大作も手がけるし、その大作で儲かった分で目立たないけど良質な映画を買い付けて丁寧に宣伝して世に出せる。おかげで俺が撮るようなマイナー映画にも手をかしてくれるから感謝してるけどね」
如月監督の言葉を聞きながら、ぐっと奥歯を食いしばった。