狼社長の溺愛から逃げられません!
私はなにを悩んで揺らいでいたんだろう。
ちゃんと考えればわかる。
あの社長が、『ルイーズ』を見放すはずないんだ。
じゃあなんで、好きにさせておけばいいなんて言ったんだろう。
そう思っていると、如月監督構えていたカメラを下ろし、中から黒いカセットのようなフィルムを取り出す。
慣れた動作でフィルムを交換しながら口を開く。
「映画に関わる仕事をしてるとさ、正直好きだけじゃやっていけないこともたくさんあるんだよね。でも、仕事はじめたばっかりのころ夢を語り合ってた四人がそれぞれ頑張ってると思ったら励みになるし刺激にもなる」
「それだけ仲がいいんですね」
監督の言葉から四人の絆が伝わってきて思わずため息をつくと、いやそうに顔をしかめた。
「仲良くないよ。ライバルだもん」
「ライバルですか?」
「いつもすげぇ嫉妬してる。仕事成功して会社を大きくした黒瀬のことも、日本で女優として成功したのに全て捨ててアメリカでプロデューサーになった紗英のことも、鉛筆一本と自分の感性だけで評論家として食ってる小笠原のことも、みんな俺にはできないことをしてるのがすごいむかつくし、絶対負けたくないって思う」