狼社長の溺愛から逃げられません!
「ありがとうございます。おじゃまします」
そう言って足を踏み入れて、室内の様子に驚いた。
打ちっぱなしのコンクリートの壁がおしゃれな十畳ほどのリビングには、壁一面天井まで届くほどの大きなラックにDVDがぎっしりと詰め込まれていた。
ダイニングテーブルに置かれたパソコンに本。積み上げられた映画のパンフレットに雑誌。
部屋の壁に乱雑に貼られたフライヤー。映画の試写会の日時や上映スケジュールがぎっしり書き込まれたカレンダー。
雑然とした部屋の中は、映画関係のもので溢れていた。
「すごいですね……」
思わず圧倒されてつぶやく。
そんな部屋の中で小笠原さんは、ダイニングテーブルの椅子を引っ張り出し乱暴にこしかけこちらを見た。
「まぁ、ここが俺の仕事場だから」
小笠原さんは当然のようにそう言うけれど、こんな映画漬けの生活、よっぽど映画が好きじゃないとやっていけない。
小笠原さんも、映画が大好きなんだ。社長や如月監督と同じように。
そう確信した。