狼社長の溺愛から逃げられません!
「で、あんたはなにしにここに来た? あの批評を載せないでくださいって土下座でもしてみる?」
小笠原さんに冷たい口調で問われ、口を開く。
「今日カナダから帰国した社長に、小笠原さんからいただいた『ルイーズ』の批評を読まれてしまったんです」
「ふーん」
私の言葉に、小笠原さんの眉がぴくりと上がった。
無関心を装っていても、本当はすごく気にしているのがわかる。
「私がこんなものを雑誌に載せられたら『ルイーズ』の評判が落てしまうって焦っていたら、社長は『くだらない』って取り合ってくれませんでした」
「は! かわいそうに。あんた相手にもされなかったんだ」
小笠原さんがゆかいそうに肩を揺らす。
だけど苛立ってる。笑いながらも神経がぴりぴりしているのがなんとなくわかる。
「そりゃ、元カノを利用してカナダで大きな映画の配給権を獲得して、話題を集めて大忙しだもんな。あんなマイナー映画や平凡でつまらないあんたのことにかまってる暇なんてないか」
わざと人を傷つけるような小笠原さんの言葉を聞きながら、私は静かに頷いた。
「はい。私もそう思いました」