狼社長の溺愛から逃げられません!
 

その答えが予想外だったのか、小笠原さんが驚いたようにこちらを見る。

「でも、そう思ってしまった自分が恥ずかしいです」

小笠原さんが眉をひそめる。
なにか言おうと口を開きかけたけど、その前にまた私が話し出す。

「サイトや映画雑誌を探し回って、小笠原さんの今まで書いた批評を読める分は全て読みました」

如月監督と別れた後、一度会社に戻って資料室を漁った。小笠原さんが連載を持っている雑誌のバックナンバー探し、新しいものから古いものまで読めるものはすべて読んだ。

そして思った。
この人は純粋に、映画が好きなんだって。

「小笠原さんの書かれた批評は、ときどき毒舌だったり辛辣だったりするけれど、どれもその作品にたずさわった人たちへの敬意がこめられてました。どんな映画でも、見る価値がないなんて乱暴で一方的な言葉を使ったことはなかった。映画を見る喜びにあふれた評論ばかりでした。小笠原さんが人気の映画評論家なわけがわかります。小笠原さんが書いた文章を読んだら、思わず映画館に足を運びたくなる」

私がそう言うと、小笠原さんが眉をひそめた。
不機嫌そうな表情に、わずかに戸惑いが浮かぶ。


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