狼社長の溺愛から逃げられません!
 

「はい! すごく嬉しいです。一週目の動員数もなんとか目標をクリアできたし、打ち切りで上映期間切り上げとかはなさそうなんでほっとしてます」
「頑張ってたもんね」

華絵さんに優しく微笑まれて、「ありがとうございます」と頭を下げた。

「いろんな人に協力してもらったおかげです」

先週の土曜日についに『ルイーズ』が劇場で公開された。

週末はじっとしていられなくて、都内の映画館を回ってはお客さんの様子をのぞいていた。

映画館から出てきた女の子が、大切そうにルイーズのフライヤーをバッグに入れていたのが嬉しかった。
一緒に見た友達に「映画も面白かったし、フライヤーもかわいいから部屋にかざろうと思って」なんて楽しそうに話していた。

配給会社の宣伝なんて、映画の華やかさとは正反対に表舞台に出る仕事じゃない。
基本映画そのものの内容に携わることも、スタッフロールに名前が乗ることもない。

ただひたすら一本の映画を誰かのもとへ届けけるために影の走り回る仕事。
たぶん、映画を見に足を運ぶお客さんは、私たちの存在なんか気にも留めない。

誰が作った宣伝文句かなんか考えもせずに、ただ映画の内容に興味をもって映画館に来てくれる。


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