狼社長の溺愛から逃げられません!
だけど、それでいい。
こうやってお客さんが映画館に来てくれるのは、私の努力が誰かに届いた証拠だから。
映画館から出てきたお客さんたちを眺めながら、満足感で胸がいっぱいだった。
そのときの気持ちを思い出して、胸に手を当てこれからも頑張ろうとひとり頷いていると、華絵さんに指をさされた。
「で、その指輪は社長からの宣伝を頑張ったご褒美?」
「えっ……!?」
薬指にはめた社長からもらった指輪を見ながらそう言われ、慌てて反対の手で隠す。
「ええと、これは……」
なんとか誤魔化そうとして視線が泳ぐ。
「いいよ、隠そうとしないで。無事付き合うことになったんだよね? おめでとう」
華絵さんに優しくそう言われ、じわりと涙腺が緩んでしまう。
「あ、ありがとうございます」
「付き合ってることを内緒にしてるわけじゃないんでしょ?」
「そうなんですけど。わざわざ公言することでもないし、私と社長じゃ釣り合いが取れてないから……」
「そう? 私は前から美月ちゃんと社長はお似合いだなって思ってたよ?」
頬杖をつきながら華絵さんが平然とそう言う。