狼社長の溺愛から逃げられません!
「なんだよ」
その勢いに社長が苦笑しながら首を傾げた。
「だって、喘息なら煙草なんて吸ったら、ダメじゃないですか……!」
「ガキのころの話だって」
平然と言う社長に顔をしかめる。
入院するほど重い喘息だったくせに、あんなにすごい量の煙草を吸っていたなんてしんじられない!
「でも、絶対体によくないです! もう煙草吸っちゃだめですからね!」
私がすごい剣幕で言うと、社長はあきれたように笑った。
「とりあえず今は、お前がいるから吸わないかな」
とりあえず今は、なんて。
それじゃあ私がいなくなったら、また煙草を吸い出すつもりみたいじゃない。
「じゃあ、社長が煙草を吸わないように、私が一生そばで見張ってますからね」
「一生か。長いな」
「逃しませんから」
そう言うと、社長は吹き出すように笑った。
私の大好きな、髪の毛の隙間から見える無防備な笑顔。
「わかった。覚悟しとくよ」
そう言って、私を見る。
ゆっくりと体を近づけ、社長が顔をかたむける。
私は目を閉じて唇が触れるのを待ちながら願った。
ずっとずっと、この人のそばにいられますようにと。
『社長のキスから逃げられませんっ!』END