狼社長の溺愛から逃げられません!
「どうせ、あの広告代理店の軽そうな男だろ。あんなくだらない男、別れてよかったんじゃないか?」
社長はそう言いながら、咥えていた煙草をポケットから出した携帯灰皿に押し込んで消す。
その動作を見ながら私は驚きで固まってしまった。
「な、なんで……」
なんで社長が私の彼氏のことを知っているの!?
ぎょっとしている私に、社長はすずしい顔で口を開く。
「二年くらい前に、映画の試写のときに出入りしてた男だろ。仕事の場なのに見境なくお前を口説いていたから覚えてた」
「え!?」
その言葉にさらに驚く。
「私、あのとき口説かれてなんていませんよ。挨拶をしてすこし世間話をしただけです。そのあと偶然私の家の近くで何度か会って親しくなって……」
私がそう言うと、社長は呆れたようにため息をついた。