狼社長の溺愛から逃げられません!
「あ。ランチセットいやだった?」
「いえ、ランチセットでいいんですけど。その前です」
「前?」
「試写会で口説かれてたって。同じようなことを社長にも言われたんですけど、私口説かれてなんていませんよ」
私がそう言うと、華絵さんはメニューを閉じながら眉をひそめた。
「は? 美月ちゃん本気で言ってる?」
「はい。試写会のときは挨拶だけして、そのあと偶然何度か会って自然と仲良くなったんです」
その言葉に、華絵さんは頭を抱えてため息をつく。
「にぶすぎ……! あのときしつこいくらい美月ちゃんに住んでる場所とかよく行くお店とか聞いてたから、あいつ仕事場で女を口説くなよってみんな怒ってたんだよ?」
「そうなんですか……? 私ただの世間話だと思ってました」
「世間話なわけないじゃない! あんなに下心丸出しだったのに!」
「下心……」
華絵さんの言葉に、顔をしかめて思い出してみる。
だけど、やっぱり口説かれた自覚がなくて頭を抱えた。
人の下心なんて、わかんないよ。
「もしかして、その彼が美月ちゃんのはじめての恋人?」
「はい」
そう聞かれうなずくと、華絵さんは額に手を当てて天井をあおいだ。