狼社長の溺愛から逃げられません!
「そっかぁ。鈍感な美月ちゃんは学生時代の男の子の遠回しなアプローチに気づかずに、フラグなぎ倒してここまで来て、恋愛経験ゼロのまま社会人の押しの強くてたちの悪い男に捕まってしまったのかぁ……!」
もったいない……! と唇を噛む華絵さんに、私は首をかしげる。
「なんですかそれ。私フラグをなぎ倒してなんていませんよ」
「鈍感な上に無自覚なのね」
人の話を聞かない華絵さんは、「これは重症だわ」と勝手に納得してうなる。
「そういえば、前に残業してたとき古賀が会いに行かなかった?」
「はい。ハンバーガーを買ってきてくれました」
私が大きくうなずくと、華絵さんはまた天井を仰ぐ。
「ハンバーガーって! 若い女子に差し入れすんのに、もっと気の利いたものがあるだろうが……!」
「あと、実家で飼ってる犬に似てるって言われました。だから古賀さん私にいつも優しくしてくれるんですかね」
「実家で飼ってる犬って……! あいつ、アプローチ下手すぎか……っ!」
空に向かって低い声でつぶやいた華絵さんは、気を取り直したようにふうっと息を吐き出す。