狼社長の溺愛から逃げられません!
「有川、行くぞ」
社長がそう言って、私の腰を抱き歩きだそうとしたとき、背後から努が叫んだ。
「ふざけんなよ。お前なんか、都合がいいから付き合ってただけだよ。二番目だよ、二番目!」
驚いて振り向くと、努は座り込んだままこちらを睨みあげていた。
「二番目……?」
「俺だって、ずっと他にも女いたよ。お前が鈍感で気づかないから、ずっと二股かけてたんだよ!」
驚いて目を見開く。なんて言葉を返していいのか分からなくて凍りついた。
その努の言葉に、私の腰を抱いていた社長が舌打ちをした。
呆然と立ち尽くす私の横をすり抜け、努の胸ぐらを乱暴に掴み上げへたりこんだままの努を強引に立ち上がらせる。
右手を強く握ったのを見て、私は慌てて社長にかけよってその腕にしがみついた。
「やめてください!」
そう叫んだ私を、社長は苛立ったように眉をひそめてみつめる。
「なんで止める?」
「いいんです」
首を横に振りながらそう言うと、社長がゆっくりとため息をついた。