狼社長の溺愛から逃げられません！

　

不思議に思って首をかしげると、社長はこちらを見る。

「言ったって、お前が無駄に傷つくだけだろ」

優しくそう言われ、胸が熱くなってくちびるを噛む。

「泣くなよ。あいつのために泣くような、価値のある男じゃない。あんなダメ男と別れられてせいせいしたって笑ってろよ」
「……はい」

頷いて笑おうとしたけれど、涙がこらえきれずにぽろりと目尻から落ちた。
せめて社長に見せないように、うつむいて手で顔を隠す。

「あー……、だから泣くなって」

あきれたようにそう言って、社長が私の肩を抱いた。そしてそのまま抱き寄せ胸に私の顔を押し付ける。

その俺様な社長らしい慰め方に、ますます胸が熱くなる。

努に二股をかけられてたのが悔しいんじゃない。
努と別れたのが悲しいんじゃない。

こんなに涙が止まらないのは、私が二股をかけられていたことを言わないでいてくれた社長の優しさのせいだ。

私が悲しまないように隠そうとしてくれていたことが嬉しくて、涙が止まらなかった。

「ごめんなさい……。すぐ、泣き止みますから……」

ひくひくとしゃくりあげながらそう言うと、社長は困ったようにため息をつき両手で私の頬に触れた。