狼社長の溺愛から逃げられません!
「有川さん」
突然背後から声をかけられ、びっくりして振り返ると先輩の古賀さんがいた。
「あ、古賀さん……」
「準備は順調?」
「はい」
そう問われ、動揺を隠すように慌ててうなずく。
「華絵さんがさっきオフィスで電話が出たら、有川さんは今日は社内にいるのかって変な男から聞かれて、試写会の準備をしてるって言ったら無言で切れたって言ってたんだよね。だからちょっと不安に思って早めに来たんだ」
「そうなんですか……」
きっと努だ。そう思いながら「ありがとうございます」と頭を下げる。
「もしかして、今社長とキスしてた?」
唐突にそう聞かれ、思わず目を見開いた。
「え……?」
見られてた!? 焦って思わず口元を押さえると、古賀さんが顔をしかめた。
「有川さん、社長と付き合ってるの?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
なにか言い訳の言葉を探そうとして、でもなにも言えなくなってしまった。