狼社長の溺愛から逃げられません!
 

……もしかして、雨?
さっきまで、あんなにいいお天気だったのに?

そう思って空を見上げると同時に、またひと粒落ちてきた雨。それまで青かったはずの空が、灰色の重い雲に覆われていた。

上を向いたおでこに雨粒が落ち思わず目をつぶると、ザァーという音とともにアスファルトをいくつもの水滴が叩く。

ぽかんとしていたら、あっという間に土砂降りになっていた。

「きゃー!!!」

慌てて荷物を持ってどこか屋内に非難しようとして、ひきよせた紙袋の取っ手が雨に濡れてやぶれた。

「うそ……っ!!」

中はビニールのパッケージで梱包されたシーツだから、濡れてだめになることはないけど、両手いっぱいの荷物があるのに取っ手が破れてはもう持ちきれない。

「どうしよう……!」

だけど、このまま雨の下で途方にくれていても仕方ない。

こういうときは、とりあえずタクシーだ。

そう思って道路を行くタクシーを捕まえようと手を上げる。
けれど、この雨の中で大荷物を抱えた上にずぶぬれの私の前を、無情にもタクシーが通り過ぎていく。


 
< 91 / 273 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop